【第13章】新しき方程式

まさかのドッグトレーナー開業により、ちゃんと飯が食え、ちゃんとお風呂に入り、ちゃんと眠れるようになって来た。僕は、24時間営業のスーパー温泉にしばらく居座った。
けっして裕福では無かったが、収入が安定し、最低限をキープできるようになってきた。
まずは、お世話になったおばちゃんへの恩返しをした。真っ先に靴をプレゼント。それから服とホッカイロ。もちろん、大好きなロールパンとマーガリンもだ。
おばちゃんは、感情も言葉も無いが、仕草で喜んでいるのがよくわかった。なんだか、可愛い。
人は、心の余裕ができるとこうも、世界が違って見えるのかも、この時に味わった。
それからの日々、ドッグトレーナーを行いながらも、次のステップを考えていた。
どうやって多額の借金を返済するかである。
間違いなく、社会復帰し、僕が固定の住まいを持てば、取立てが大量に押し寄せてくる。
それに潰されないための戦略と戦術が必要だった。
そりゃ、このままドッグトレーナーを続け、全国のチェーンまで展開するのもありだろう。
1円を1ラブとレート換算すると、1日どのくらいの人に愛され感謝される必要があるか指数が出てくる。
ただし、ドッグトレーナーのように、自分自身の限られた労働時間を基準に置くと返済に追いつかない。
自分の 著作か権利かシステムに愛される付加価値をつけ、単純計算1日2,000人から50ラブ感謝される計算すれば、月に300万ラブ。
すなわち月300万円。
なるほど!ここを目指せば返済できるようになるかもしれない。
1日2000人から50ラブもらえる人間になる事だと考えた。
僕の十八番は、システム開発ができる事。これをまず武器に使おう!
僕は、電話を借りに行った友人のところに尋ねた。
今井「すまん!申し訳ないが、月に2万円でパソコンと電源を貸してくれないか・・・。あと、お金払うのでサーバーの契約をして欲しい。」
友人「いいよいいよ、金は要らないパソコンと必要なソフトは入れておく。あと、そこ使っていいよ。」とお店のガレージを指差した。
今井「おおお!!ありがたい!!心から感謝する。」
僕は、気が狂ったようにシステム開発に没頭した
1発目のプロトタイプは、愛する動物たちへの感謝を込めてペット病院向けのサービスを構築。
そう、今度は見失わない!ちゃんと愛を込めて、役に立つものを提供するんだ。
開発期間は徹夜で3日だった。開発完了するも、すぐに近くの動物病院に営業して回った。
ガラ携にQRコードから登録すると、お知らせが自動で配信できる仕組みだった。今でこそ当たり前だが、当時は、割と画期的だった。
月額4800円と1ユーザー配信30円での契約。僕も犬を飼っていたので、フィラリア予防などDMがよく届いていたのだ。このDM代より安くなるというのが、交渉文句。
病院というのは、割と最新機器が好きなのも把握していた。これが予想以上に契約できて、他県まで営業拡大して行ったのだ。
この収入で、月の収入が50万円を超えた。
つまり、僕の手がけた仕組みで月に50万ラブ分、感謝していただける物を完成させたのである。
しかし、まだまだ、ラブが足らない。
もっと人を愛して、愛される必要がある!!
今まで、僕は依頼された物を制作、開発し納品すると言う仕事を主としていた。
ITの会社をしながらもこのITの性質に気がついていなかった。
プラスで積み上げていては、労働時間の限界にぶち当たるのだ。
つまり、足し算ではない。掛け算だった。
この愛をより拡散し、広げていくには、掛け算で設計して行く必要があったんだ!!
そんなの常識だよ。と思われる方もいるとは思うが、これは人生の大発明だと掲げて、興奮してどうしようもなくなったのを覚えている。
この方程式は、見事に当たったのである。
この式をベースとして、次なるシステムを開発し、ミッションである月300万ラブをクリアーし、一気に返済の巻き返しに入った。
14章へ続く・・・。

こもって開発したガレージの2階